今日はエイプリルフール。嘘をついても許される日だ。
俺はずっとアイツに散々いろんなことやられてきた。
だから、今日くらい、いいよな。
サスケは日頃の鬱憤を晴らすべく、ナルトの家の前に来た。
だが、俺は甘かった。ナルトも考えていたということを頭に入れていなかった。
今後の運命を俺は知る由も無かった。
チャイムを鳴らしてナルトを呼び出す。
インターホンから聞こえてきたのは、ナルトではなくその母であるクシナの声だった。
彼女はさすがはナルトの親というべきなのか、すごく似ている。・・・というより、ナルトが似たのか。
最初は彼女の行動に少々驚いたものの、今は普通になっている。
「すみません、うちはです・・・ナルトは居ますか」
・・・・・・。
・・・・・・おかしい。返事がない。何故だか俺にはわからなかった。
すみません、ともう一度声をかけてみる。返事は無かった。
不在か・・・と舌打ちをしたその時、ガチャ、とナルト家のドアは開いた。
「えっ、あ、こんにち・・・は・・・?」
先ほど普通になっているとは言ったが、今回は驚いた。
クシナが涙目になっているからだ。しかも目じりが赤い。
「・・・あの、ナルトは居ますか?」
「・・・ナルトは・・・、・・・・・・」
言い終わらないうちに涙が溢れてきていた。
崩れ落ちるクシナをサスケが支えようとした瞬間、颯爽とある人物が来た。
金色の髪色に蒼眼、そしてナルトの父、ミナトである。
「ん、クシナ・・・だから俺が出るって言ったのに」
「ごめ、ん・・・ってばね・・・」
目の前で何が起きているのか全くわからない。ただ分かったのは、ナルトがいないということだけ。
嫌な予感が胸の奥でしていた。
「あ、あの・・・」
もう一度声をかけようとして、ミナトに遮られた。 . . . . . .
「君、サスケ君だよね? いつもナルトがお世話になっていたね」
サスケは不可解に思った。普通そこは過去形じゃな・・・
ハッと思考途中で気づいた。まさか。
「・・・ん、ナルトは・・・奥の部屋に、居るよ」
そういわれた途端、己の身は走り出していた。
靴を派手に脱ぎ散らかし、廊下を音を立てて走り抜ける。一番奥のナルトの部屋に向かって。
ガチャ、とドアを開けると、そこにはナルトと、その横に座るサクラが居た。
「・・・おい、サクラ、何で・・・何で、ナルトの顔に紙なんて乗ってんだよ」
うつむいていたサクラが徐にこっちを見つめた。
「ナルトは・・・」
嫌だ。
「・・・突然の」
嫌だ。
「心筋梗塞で」
「やめろォ!!」
無意識にサクラの話を制止した。してしまった。
自分で質問したが、答えを聞きたくなかった。
” 死んだ "なんてことを。
一歩一歩、頼りない足取りでナルトのそばへと寄っていった。
動かない。紙が動いていないのがいい証拠となっている。
「・・・ッナルト・・・」
ドサ、と膝を付いてナルトを見た。
「サクラ・・・この紙、どけていいか」
「・・・ナルトの両親にバレないようにね」
さ、とどけた。まだ生きてるかのように生き生きしているナルトの顔。だが微動だにしない。
この事実をサスケは受け止められなかった。
わなわなと手が震えてしまう。これからもうナルトに触ることさえできなくなるだなんて。
涙がこぼれそうになるのを抑えながら最後に一回だけ、と端麗なナルトの頬に触れた。
「・・・・・・・・・・・」
おかしい。温かい。サスケは青ざめた。
ぺたぺたと頬以外にも触れてみた。首を手を添えて見ると確かな律動がそこにはあった。
ばっとサクラのほうを見て見ると口の端が微妙に上がっている。それに、笑わないように口を噛んでいる。
まさかと思いドアのほうへ視線を送ると気付かれた、とばかりにミナトとクシナが隠れた。が、クシナの赤い髪がちらりと見えているので殆ど意味はない。
当のナルトに目を向ければ、眉を苦しそうにさせている。笑いをこらえるように。
そういえば、俺の来た目的は・・・
「・・・・・・こんの」
ウスラトンカチと勢いよくかかとで腹に蹴りを入れた。
「おぶぅ!」
目をかっと開いて苦しげにうずくまった。
「いや、ほんとごめんってばよサスケェ・・・エイプリルフールだからさ」
「それにしてもやりすぎだろこれは! 何両親まで巻き込んでんだてめぇは!」
全てはエイプリルフールの大嘘。役者までそろえて完璧に演技していたのだ。
騙しにいこうとしたが、逆に騙されたということである。
「いやあ、ナルトがこういうことやりてえ! っていうから」
「ナルトの母さんは黙っててください!」
「ん、それにしてもサスケ君の演技すごかったよ」
「演技じゃねェ!! 大体なんで俺が来る前提になってんだよ! こなかったらどうするつもりだったんだ!」
「え、そのときは皆でイースターのパーティしてたんだってばよ」
飄々とこたえる三人に嫌気が差した頃、サスケは最後の第三者に怒鳴るように言った。
「サクラァ! 何でお前までいるんだ!」
「呼ばれたからよ」
「何で協力した!」
「理由は何時でも簡単よ。" 楽しそうだったから "」
馬鹿が四人。質問の雨は急に止んでしまった。
サスケは天井を仰いで、一つ大きなため息をついた。
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墓穴を掘るサスケを書きたかったんです(主張)
うずまき親子かけて大満足^~^! ノリのいい二人のことだから息子の提案にも乗るんだろうなぁ。
エイプリルフールの王道として好き嫌い問答とかでもよかったんだけど気付いたらこんなの創造してたのでこれにしました。こういうのもありだよね。
ここまで読んで頂きありがとうございました!